おじさんがブログをはじめました

今更ながらブログをはじめました。キャンプなど日々のこと。

手軽に冒険

一時期、登山家や冒険家の手記にハマった事があります。

山岳会などに所属して登山をする場合、山行後に【山行記録】を書く事が求められたりします。情報共有だったり、ミスや反省点の整理だったり、目的は様々ですが後で冷静になって振り返って客観的に自分の行動を分析するというのは非常に大切な事です。

山行中は簡単な行動記録をメモしながら動き回り、下山後にメモと記憶を頼りに山行記録を書くわけです。「さあ書け」と言われても赤子同然の私。そんな私に参考文献として先輩が差し出してくれた書籍が、加藤文太郎【単独行】でした。ナニコレスゲーシブイんですけど。当時、内容も理解せずに「いつも読んでる雑誌はSTUDIO VOICEっス」とか言ってるような薄っぺらーい若造だった私は、少しナメた態度で読んでみる事にしました。

加藤文太郎【単独行】

そしてそのシブすぎる書籍に、私は衝撃を受け引き込まれます。シンプルに粛々と綴られた行動記録ではありますが、生々しく臨場感に満ちた文章。大正~昭和初期という時代に思いをはせながら読むと実に味わい深い。これは後に、新田次郎氏によって孤高の人という名作エンタメへと変貌するわけです。以降、「いつも読んでる雑誌は【岳人】と【ROCK&SNOW】です」に変更となりました。

 

一流の登山家とか探検家という人たちは、文才も持ち合わせている方が多いようです。もちろん書籍化にあたって編集者の力を借りてはいるはずですが。

松本竜雄【初登攀行】、芳野満彦【山靴の音】など読み応え抜群で、限界ギリギリを攻める登攀中の息遣いまで聞こえてくるようです。一流クライマーの記録を読み感情移入するあまり、自分も限界ギリギリを攻めれば結構登れるんじゃないか?と錯覚してしまいます。そして鼻息荒く意気揚々と山や岩場に行くも現実を知り、己の無力さに項垂れるのです。所詮三下、私のギリギリ限界点、低すぎです。

初登攀行 山靴の音

 

ご本人の著ではありませんが、佐瀬 稔【狼は帰らず アルピニスト・森田 勝の生と死は名著でしょう。森田勝氏と同時代を生き、技術を競い合ったクライマー、長谷川恒男氏を題材にした【長谷川 恒男 虚空の登攀者】、山田昇氏を題材にした【ヒマラヤを駆け抜けた男 山田 昇の青春譜とセットで読んでいただきたい。そしてこれらを読んでから、夢枕獏神々の山嶺を読んでみるのもおすすめです。ああ、何故か一冊紛失。多分貸したまま帰ってきていないと思われます。

セットで読んでいただきたい

 

そしてなんと言っても、植村直己氏の著書。

単独行での極限の状況なのになんだか暖かさを感じたり、チーム遠征での物凄い悲壮感を共有させてもらえたり。プライドもコンプレックスも、自分の欲望もさらけ出す飾り気のない文章は非常に読みやすく、植村氏ご本人の人間像がとてもよく伝わってきます。ノンフィクションドキュメンタリーとしての完成度が高いのです。初めての方は【青春を山に賭けて】から読んでみると良いかと。単なる登山記録ではなく、ドタバタ冒険記録として楽しく読めます。やはりこの方は今でも、この先もずっと日本の宝として語り継がれるのでしょう。

植村直己氏の著書

 

これらの名著は、映像や写真で見る景色だけでは感じる事のできない、リアルな空気感を我々一般人に伝えてくれます。そしてノンフィクションだからこそ、あたかも自分が冒険をしているかの様な体験をさせてくれるのです。皆さんも、秋の夜長やキャンプのお供に是非。

 

まぁ、先日のキャンプでは本なんて読まずにスマホ見ながらアイス食ってましたけどね。

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